目線によるずれ
ボールを投げる瞬間、私たちの目がバスケットボールのシュートのようにボールの真後ろにあれば、もっと投げる技術は習得しやすいでしょう。
バスケットボールの場合は、目標に向かって真っすぐ腕を伸ばして投げることができます。
しかし、野球でその投げ方では強い球を投げることができません。
実際に投げる瞬間、目とボールが離れているため、「目で見る投げる方向」と、「実際にボールを投げる方向」にずれが生じます。
人間の脳は優れていて、経験を重ねて、見た目と実際のずれを補正します。
しかし、初心者はその「経験」がなく、なかなか狙ったところに行かないために、この補正がうまくいきません。
野球を始めたばかりの選手に抜けたようなスライドぎみの不安定な回転の球が多いのはこういった理由になります。
(回転数が少ないため、変化はしません。)
回転数が多いため、実際に変化します。
実は厄介なことに、体も回転するし、腕を振る方向も直感的にはボールを投げる方向とずれていると感じる選手も多いため、余計に複雑です。
このイメージがバラバラのうちに、
「狙ったところに投げよう」
「速い球を投げよう」
と練習を積んでいくと、ズレとズレのつじつま合わせが重なり、投げるイメージがどんどん複雑になり、悪いクセがつきやすくなります。
リリースの瞬間を高速カメラで見ると、外側にひねっているように見えます。
しかし、日々コンディションが変わる中で、いつでもリリースの瞬間のずれを合わせることは非常に難しいことです。
人間の骨格上、本来無意識に外側に手のひらが向くようになっているため、「意図的にひねる」のではなく、「自然に外側を向く」と考えたほうがいいでしょう。
ほんの一瞬のリリースをあれこれ考えてしまい、まったく投げ方がわからなくなってしまう選手もたくさんいます。
リリースの感覚は人それぞれですが、多くのプロで活躍する投手は、「真っすぐ腕を振っている」感覚の人が多数です。
一人一人感覚が違うため、言葉だけで万人に当てはめることはできませんが、「真っすぐ」シンプルなイメージで投げられる選手の方が、コントロールが安定し、投げるほどに上達することができます。
本コーナーでシンプルに真っすぐ投げるイメージ作りに取り組んだのは、以上のような理由があったのです。
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